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パンに比べてコメ作りは努力してきたか? 米卸業の危機感が生んだ大変革

   

日本一「米の総合カンパニー」の全貌

米にこだわった店を手がける神明の本社は神戸にある。本業は米の卸業界ナンバーワン企業だ。1902年創業で、従業員はグループ全体でおよそ2000人に及ぶ。

米卸とは、農家が収穫した米を農協などを通じて集め、精米したうえで小売や飲食店に卸す会社のことだ。

神明本社では朝からご飯のいい匂いが漂う。入荷したばかりの米を試食するのが営業本部の朝の儀式だとか。あらゆる米を食べては良し悪しを見分ける、米のプロ集団なのだ。

この日は今年の新米が入ってきていた。「『ゆめみずほ』と『はなえちぜん』、北陸の米は今年いいと思うな。粘りもあるし、甘味もあるし」と評するのは神明4代目社長藤尾益雄(52歳)。「本当に米が好きで、米についてはどんなことを聞かれても答えられるくらいプロ集団として頑張っています」と言う。

神明の中枢、西宮浜工場。中には1日200トンを処理する巨大な精米機が。玄米のヌカを削り取り、白米にする。玄米は吸水性が悪く、ボソボソして食べにくいが、白米にするとしっとりふっくら炊き上がるようになる。

精米した米は続いて光学式の選別機を高速で流れていく。機械の中では特殊なカメラが米の一粒一粒をチェック。不良品はエアーで弾く。

最後は必ず実際に炊いて確かめる。社内の味覚試験に合格した精鋭達が米のサンプルチェック。味や香り、硬さなどを評価する。こうしていくつものチェックに合格した米だけが、商品となって全国の米屋やイオン、ダイエーなどのスーパー、飲食店に出荷されていくのだ。

米卸の会社がなぜ定食屋や回転寿司をやっているのかという問いに、藤尾は「米の消費量の減り方にすごい危機感を感じまして、『もっと米を食べてもらうにはと考えました」と答える。日本人の主食、米の消費量は、少子高齢化や食生活の多様化などで年々減少しているのだ。

「ただの精米卸では限界がある。お客の口元まで届けることに力を入れていこうと。時代の変化に対応するためのチャレンジです」

逆境を生き残るために藤尾がとった戦略。それは「米卸からの脱却」だった。「ライス・イノベーション」を掲げ、保守的な米業界にあって、革新的な取り組みを始めた。米にかかわるあらゆるビジネスに乗り出し、目指すは米の総合カンパニー」だ。

米の消費拡大へ~炊飯器から「奇跡のパックご飯」まで

神明のライス・イノベーション。その一つが神明が開発した可愛らしい一食用の炊飯器ポッディー」(4980円)だ。最近、女性誌にも取り上げられて人気に火が着いた。たった10分で炊けるのが受けている。

10分で炊ける秘密は「ポッディー専用の米にある。早稲田大学と共同開発した「あかふじソフトスチーム米」だ。ご飯をおいしく炊くには、最初低温で加熱し、米のでんぷんを糖に変える必要がある。「ポッディー」の米は、あらかじめ蒸気で蒸してこの工程を済ませてあるのだ。

「ポッディー」開発には、藤尾の「米を炊くには手間がかかるという意見もかなり多かったんです。できるだけ手間がかからないようにすれば米の消費はひろがるのではないか」という思いがあった。

藤尾のさらなる戦略は、国内有数の米どころ富山にあった。入善町の米農家、羽黒智さんは午前中の作業を終えると仲間と昼休みに。この日の昼食はパックご飯。これも神明の商品だ。羽黒さんの昼はもっぱらこれだとか。「おばあちゃんが炊いていた米とまったく一緒の味がする」と、米農家も認めるパックご飯を作り上げたのだ。

おいしさの秘密は、立山連峰の天然水を使い、米の産地、富山で作っていること。超軟水でご飯がふっくらと炊きあがる。もう一つの秘密は添加物を一切使っていないこと。だからパックごはん独特の匂いがしない

藤尾はこのパックご飯で農林水産大臣から感謝状を贈られた。それは6年前の東日本大震災のとき。藤尾は被災地にこのパックご飯30万食を無償提供。他のパックご飯は匂いで敬遠されるケースもあったが、これは、「炊いた米のようにおいしい」と喜ばれた。まさに「奇跡のパックご飯」なのだ。

それをきっかけにスーパーなどの引き合いが増え、今や年間8000万食近くを売る人気商品となった。供給が追いつかない状態となり、藤尾は富山工場の増設に踏み切った。「100億の投資。社運をかけての投資になります」と言う。

こうした数々の取り組みで、米の消費量が減る逆境の中でも、神明は年々売り上げを伸ばしている

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